【実体験】30代で住宅ローンを抱えながらも消防士(公務員)から転職した理由3選
はじめに
30代からの転職活動って不安が多いですよね。
特にこの年代になると、家庭を持ったり住宅ローンを抱えたりという人も多いと思います。
そういった守るべきものがあると、転職という一種の賭けに出るのには勇気が要るものです。
ましてや公務員からの初転職ともなれば、わざわざ危ない橋を渡るような感覚ではないでしょうか。
それでも私は消防士から転職しました。
当時すでに35歳で、妻と2人の娘がおり住宅ローンもある状態でした。
よほどのことがなければ転職という選択肢を選ばないような境遇でしたが、転職したい気持ちを抑えられなかったのです。
諸事情により合計で3回の転職を経験したものの、僕は消防を辞めたことについて後悔したことは一度もありません。
今回の記事は個人的な話となってしまいますが、生活環境を理由に転職を悩んでいる方にとっては参考になるのではないかと思います。
この記事を書いた人
熊井クララ
1987年生まれ、地方在住。私立大学の文学部を卒業後、地元の消防本部にて11年間勤務。
現場活動や通信指令センターでの経験を積み、ITベンチャーや個人営業へ転職。
消防士時代の経験を生かし、特に公務員から民間への転職に関する知見を提供しています。
目次
- 消防士を辞めた理由3選
- 消防に適性がないと感じていた
- 年功序列でなく、成果主義の環境に憧れた
- 生活リズムの問題
- まとめ
1 消防に適性がないと感じていた
言いたいことをハッキリと言えない
まず性格的な問題です。
私は内向的で気が弱く、思ったことをズバズバ言えるタイプではありません。
もちろん仕事なら言いにくいことも頑張って言いますが、いちいち心の準備をしてからでないと口に出せないのです。
この点は一般的な事務職などであれば問題になりにくいでしょうが、リアルタイムで状況が変わる災害現場では困りものです。
特に、いずれ指揮を執るポジションになったら命取りだと思います。
私が言葉を発するのを躊躇したことにより、仲間の命を危険に晒すかもしれないのですから。
方向音痴
私は酷い方向音痴です。これだけでも消防職員として致命的だと思います。
1秒でも早く災害現場へ到着しないといけないのに、私は出動のたびに「この道で合ってるかな」とビクビクしながら緊急車両を運転していました。
本来なら現場に向かう途上でも、現場到着後の活動をイメージしたり隊員同士や別の隊と活動方針のすり合わせをしたりと、考えるべきことが非常に多いです。
そんななか道を間違えないだけのために脳のメモリを使い切ってしまったら、安全な現場活動などできません。
もちろん誰しも地理や水利の把握に多少の不安要素はあるでしょうし、隊員同士でカバーしあえばいいと考えることもできます。
しかし私の場合はそういうレベルではありません。
いずれ指揮者になり自ら運転しないポジションになっても、機関員(≒運転手)に道を案内してあげられないでしょう。
鈍くさい
また、現場に到着してからの動きにも自信が持てませんでした。
非常に鈍くさいので、リアルタイムな状況の変化に頭がついていけないのです。
これは訓練や現場経験を積むことで改善される面もありますが、他の職員が普通にできることが私には非常に難しく、適性の問題と考えざるをえませんでした。
長々と書きましたが、ものすごく端的に言えばポンコツだったわけです。
2 年功序列でなく、成果主義の環境に憧れた
得意分野の仕事で自信をつけた
前項で私のポンコツぶりを強調したので「能力がないなら、実力を問われない年功序列の職場の方がいいのでは」と思う方もいるかもしれません。
しかし私は、「現場には向いてないけど、事務などのオフィスワークなら周りの人よりできる」という根拠のない自信があったのです。
現場では毎日のように「使えない奴」呼ばわりされていた私ですが、災害出動のない部署に異動してからは周りに頼ってもらえることも増えました。
私は自ら希望して、消防本部の通信指令センターへ異動しました。
指令センターでの業務について語りだすと長くなるので別記事に譲りますが、私は指令センターの業務には適性があったのだと思います。
音声のみでのコミュニケーションや通信機器類の扱い、事務処理等では上司や同僚から教えを請われることも珍しくありませんでした。
そのため、「ずっと現場に出ないで本部の内勤であれば、このまま消防にいてもいいかな」と思っていた時期もありました。
しかし人事ローテーション的に、ずっと希望する部署に居続けることは難しいものです。
私は遅かれ早かれ転職する道を選んでいたと思います。
年功序列より実力主義の環境の方が輝けると思った
前述のように私は「現場でポンコツだけど無能なわけじゃない」という自信というか、そうであってほしいという願望を持っていました。
その気持ちが大きくなり、年功序列の公務員のまま能力を発揮せず終わってしまうのは惜しいと思うようになったのです。
ただし私はすでに30代に入っていて、転職で不利なことはわかっていました。
よく言われるように消防職員の仕事は潰しが利きません。
それでも営業職であれば、30代未経験でも応募できる求人が多いということを知りました。
実力次第で稼げる仕事といえば営業職というイメージもありましたし、逆に成果が出なければリターンもない、ということには納得できると思いました。
「向いている仕事に就ければすぐに稼げるだろう」という甘い考えもあったので、一時的な収入減は許容できたのです。
副業への憧れ
また、副業への憧れもありました。
副業は公務員のままではできませんし、「頑張った分だけ稼げるようになりたい」という価値観も副業なら満たせると考えました。
3 生活リズムに限界を感じた
規則正しい生活が送れない
現場隊の消防職員は隔日勤務が基本です。
当番日も仮眠の時間があるとはいえ、毎日同じ時間に寝起きするという生活は送れません。
私は神経質なところもあり、生活リズムが整っていないと大きなストレスを感じます。
現場隊だと、出動指令があれば仮眠中でも起きなくてはなりません。
非番・公休日であっても、当番隊が出払ってしまえば時間帯を問わず招集されます。
現場隊のみならず本部の事務職員も、災害の内容によっては現場に駆け付ける必要も出てきます。
これらも消防職員の宿命ですし、多くの職員は受け入れているのかもしれません。
私は一生この生活を続けるのは厳しいと思ってしまいました。
その運命を受け入れて住民のために尽くす現役の職員さんには、転職した今でも尊敬の念は持ち続けています。
まとめ
転職が絶対的な正解とは言えないが、自分の本心と向き合うことは必要
消防から転職して2年ほど経ちますが、転職を後悔したことは一度もありません。
基本給や福利厚生の面では転職前の方がよかったものの、幸福度は転職してからの方が明らかに高まりました。
転職して幸せになれるかどうかは、結局は価値観の問題だと思います。
「向いていないけど収入が安定した仕事」より「向いているけど収入が不安定な仕事」の方が私は幸せに感じやすいということです。
もちろん適性も収入も、許容できるかどうかは程度によるでしょう。
だからこそ転職するのが絶対的に正しいとは言えませんし、誰にでも転職を勧めるつもりはありません。
適性で悩んでいるなら
ただし転職はせずとも、今の仕事に疑問があるなら転職活動だけは経験したほうがいいと思います。
転職活動は収入や環境を向上させるためだけのものではありません。
自分のやりたいことや適性を見直し、より前向きに生きるための手段です。
「安定した立場に縋るより、胸を張って働ける仕事がしたい」というモチベーションがある人、私のように消防の仕事に適性がなく不安がある人は、転職活動だけでも始めてみましょう。
転職は少なからずリスクがあるものですが、転職活動そのものはノーリスクです。
この記事と重複する部分もありますが、こちらの記事「30代公務員からの転職は後悔する?手遅れになる前に知っておくべきこと」も読んでみてください。